犬猫は受取人になることはできない

大切な犬猫のために生命保険をかけたい…。そう思う飼い主さんも少なくありません。

万が一、自分が飼えなくなったときに、誰かに託すにしても、飼育費用は安く済むわけではありません。ペットホテルなら、1か月あたり犬なら8万円~15万円ほど、猫なら4万円~10万円ほどは必要です。もちろんどれだけ人の手をかけて、丁寧な飼育をするかによって予算は変わります。

1年間の飼育費は

  • 犬:100万円~200万円+医療費
  • 猫:50万円~100万円+医療費

自分に万が一のことがあった時に、これだけの費用を遺すためには、生命保険は重要な選択肢になります。

しかし、愛する犬猫だからと言って、犬猫を受取人に指定することはできません。犬猫は遺産を相続することも、財産を保有することもできません。

犬猫の飼育費のために生命保険を掛けることはできるが、問題は受取人

一方で、犬猫の飼育費や医療費のために生命保険を掛けることはできます。

しかし、問題になるのは受取人です。生命保険の受取人の多くは近しい親族です。その親族がペットの飼育費にお金を使ってくれれば何の問題もないのですが、ペットの飼育費ではなく別の目的で保険金を使う可能性もあります。

また、親族がいない、受取人になれるような親しい人がいないなど、保険金をペットの飼育費として活用してもらえる、適切な受取人を指定できない場合もあります。

そもそも、親族で頼れる人がいる人は、万が一の際のペットの飼育についても、その親族がフォローしてくれる可能性が高いわけです。頼れる親族がいない人の方が、ペットのために生命保険を遺したいというニーズを強く持っているはずです。

こうした問題を解決できる仕組みとして注目されているのが生命保険信託です

犬猫の飼育を任せる団体を受取人に指定する(生命保険信託の利用)

生命保険信託とは、生命保険信託は、生命保険による死亡保険金を信託会社が預かり信託財産として、事前に決めた受取人(受益者)に対して、信託会社から信託財産を事前に取り決めた方法で支払うことができる仕組みです。一般的には受取人が未成年であるなど財産管理ができない場合に毎年○○万円ずつ支払う等のような形で活用されます。

生命保険信託は、ペットの飼育費用を遺す方法としても使うことができます。

生命保険信託では、認定NPO法人や公益財団法人など、公益法人を受取人に指定できます。そのため、犬猫の保護活動などを行っている認定NPO法人に対して、生命保険金を渡すことができます。

頼れる親族がいない場合でも、犬猫の保護をしてもらえる団体に直接生命保険金を渡すことができるという利点があります。

当然、その団体が適切な団体であるかどうかは、きちんと事前に確認すべきです。団体に対して、事前に見学を行ったり、職員に対するヒアリングを行うことで、団体運営の適切性を判断することができるでしょう。

但し、認定NPO法人や、公益財団法人など、行政により公益性が確認された法人しか受取人に指定できないため、一般の保護団体では対応が難しいという側面はあります。

当団体この仕組みを活用するために、2020年3月に認定NPO法人を取得、現在までに4件の生命保険信託による終生飼育契約を結んでおります。

遺贈寄付(遺産の寄付)も広がっている

生命保険信託を使う方法ではなく、遺言を使うことでも、飼育費用を団体に渡すことができます。こちらの方法では、認定NPO法人や公益財団法人でなくても、法人であれば遺産を受け取ることは可能です。

当団体に対する相談についても、生命保険ではなく、遺言を活用したいという相談はしばしばあります。

遺産の相続人がいない場合、遺産は国に回収されていきます。犬猫と暮らしてきた方の場合、国に納めるよりも、犬猫のために使いたいと考えてくださる方が多くいらっしゃいます。

自分に万が一のことがあった場合に、犬猫に遺産相続をさせることはできませんが、遺してしまう犬猫の飼育費を寄付の形で団体に遺贈することは、これからのトレンドになっていくように感じています。