質問

ペットにお金を遺すためには、負担付生前贈与や負担付遺贈という方法があると聞きました。どのような仕組みなのかいまいちイメージができません。そうした契約を結べば、ペットの行く先は心配しなくても良くなりますか?何か課題やデメリットはありますか?

回答

もしも自分が飼えなくなった場合に、ペットを飼育してくれる相手がいる場合、ペットの飼育費を相手(贈受者)に渡す必要があります。それなりに高額になりますし、その相手が本当にしっかりペットを飼育してくれるかどうかという保証もありません。

負担付生前贈与や負担付遺贈は、ある負担を行うことを条件に金銭等を贈与する契約・遺言のことを指します。この場合、ある負担というのがペットの飼育ということになりますね。馴染みがないかもしれませんが、仕組みとしては単純で、あまり難しいことはありません。

負担付生前贈与であっても、負担付遺贈であっても、文面の中にどのように飼育してほしいか記載することができます。例えば「散歩は足腰に問題がないうちは雨の日以外は1日2回行くこと」「混合ワクチンの予防接種は年1回受けさせること」「全身の健康診断(血液検査・エコー・胸部腹部レントゲン)を年1回行うこと」等も記載することができます。お金がかかる事である場合は当然ながら、必要な費用以上の生前贈与・遺贈をしなければなりません。

契約書や遺言に書かれた負担の内容を、贈受者が実行していない場合は、生前贈与や遺贈を取り消すことができます。しかし、問題は、実行していないことを誰が監督するのか?という点です。遺贈の場合は遺言執行者がその役割を担うことができます。しかし、一生にわたり監督し続けることは、現実的にはなかなか難しい場合もあるでしょう。

信頼できる人・組織に任せるのが吉

きちんと飼育してくれるか不安な相手に、負担付生前贈与をしたり、負担付遺贈を行うことは、適切ではありません。一方、この人なら絶対大丈夫と思える知人・友人や、この組織なら絶対に悪いことはできないと思える信頼できる組織に託すことができれば、監督人を置く必要はなくなります。

NPOなどの組織に預ける場合は、ペットの一生涯の生活費用という、数年にわたって用いていく高額な費用を預けることになりますから、その組織が倒産しないか・活動休止しないかということが第一に確認すべき部分です。NPOというとボランティア組織を思い浮かべますが、現在のNPOは事業性が高く何らかのサービス(老犬ホームやペットホテル等)を行って、自主財源で運営されているところも少なくありません。事業の継続性を考えると、専従の有給職員が複数名いて、事業が回っているところの方が、事業の継続性は高いと考えられます。

とはいえ、どのような組織が継続性の高い組織かは、素人目には判断しにくいと思います。第一に確認すべきは決算書で、決算書が公開されていない組織は、あきらめたほうが良いでしょう。資料やHPを確認し、資金が潤沢にある組織、収入と支出のバランスがとれている組織、人財や周囲の組織とのネットワークがが十分に確保されている組織、情報公開を積極的に行っている(決算書・事業報告書の公開は最低限必要)組織であれば、比較的継続性が高いと言えると思います。

また、同じように困っている人に、継続的に支援を行っているかどうかも重要です。似通った相談を繰り返し処理していることは、組織に情報として蓄積されていき、ノウハウになっていきます。「生前贈与・遺贈を受けるのは初めてなんです。どうやればいいかわからなくて」という組織よりは、「生前贈与や遺贈は年間数件は行っています。以前のひな型もあるので、それを活用して修正して契約をまとめていきましょう」という組織の方が、安心して任せられます。

飼えなくなった場合の飼育環境についても、原則公開している組織の方が良いでしょう。見学に行き、どのような施設か確認できれば、ケアの質がどの程度であるかも確認できます。また、一時的にNPOに預けた後、一般家庭への譲渡を希望される場合もあるかと思いますが、その際の譲渡要領・譲渡実績なども加味すると良いでしょう。

ペット後見互助会とものわの場合は、NPO法人人と動物の共生センターが中心となり、サポートメンバーである弁護士・行政書士の助けを借りて、契約の作成や、お金のやり取りを行います。万が一飼えなくなった場合は、NPO法人人と動物の共生センター職員が緊急保護に向かい、センター内の飼育施設で管理します。長期的な保護が必要な場合は、サポートメンバーである老犬老猫ホーム(セカンドハウス等)に飼育を依頼することもあります。譲渡を希望される場合は、サポートメンバーの保護団体(NPO法人HAPPYDOGTEAM)と連携し、新しい飼い主を探します。

負担付生前贈与や負担付遺贈で金銭を渡す場合は、相手の信頼性をしっかりと吟味し、相手方を探す必要があることを覚えておいてください。